※数量限定
蔵元:『太平山』小玉酒造
度数:16度
使用米:雄町
精米歩合:40%
日本酒度:+0.2
酸度:1.5
アミノ酸度:0.8
使用酵母 :協会601
~『太平山』が「新政酵母」を「6号酵母」足らしめた話~
明治十二年創業『太平山』の歴史の中で、
全国的に雄飛した記念すべき年は
“昭和九年”品評会全国一位でした。
明治十二年創業『太平山』の歴史の中で、
全国的に雄飛した記念すべき年は
“昭和九年”品評会全国一位でした。
今となっては廃止された【新酒品評会】は、
現存の、お金払えば誰でも本戦に出られて、
一定の水準を超えれば全てが入賞する【新酒鑑評会】と異なり、
出品酒には順位が付けられ、
県の品評会、地方の品評会を勝ち抜いて始めて本戦に臨めます。
酒蔵数も今の二倍以上で、
「5169分の1」を勝ち抜いての全国一位でした。
その偉業を為した往時の記録が残っていた為、
それを現代に再現しました。
使用米は現存酒米全ての祖に当たるとされる血統の「雄町」。
酵母はまだ番号が付いていなかった時代の「新政酵母(6号酵母)」です。
当時と比べれば変異が著しいですが、
原料も可能な限り当時に合わせています。
製法としては酒母の設計が特殊で、
“速醸の酒母から更に速醸の酒母を作ったモノ”に、
“山廃の酒母を併せる”という、
「速山合併酛」という製法だそうです。
速醸も山廃も当時としては新しい手法ですので、
保険に保険を重ねるような慎重さを求めたのでしょう。
『太平山』の酒造りは大正二年に始まったようですが、
昭和九年頃は醸造試験所の
「小穴富司雄」技師にご指導賜っていたそうです。
『新政』から玉のような「新政酵母(6号酵母)」を分離し、
『太平山』に今も掲げられている「酒造十戒」を授けた方です。
“きょうかい酵母”とは、酵母として優秀と認められるので、
“日本醸造協会”の名の下に、全国に供給される酵母の事です。
明治期の協会1号から、現代のきょうかい19号まで続いています。
6番目の酵母として採用される事になる「新政酵母」は、
協会で培養頒布が途絶えること無く続いている中では最古の酵母になりますが
この頃の協会酵母は、
品評会一位を取るなどの実績がある蔵からの採用が基本でした。
昭和五年には、小穴技師が「新政酵母」を分離していましたが、
『新政』は上位に入賞していても、全国一位にはなれていなかったので、
どうにも足踏みをしていた処、
指導に入った『太平山』が昭和九年に全国一位を取った事で、
小穴技師も自信を持ち、翌昭和十年から、
目出度く「6号酵母」として販売される事になりました。
この後『太平山』は、
小穴技師と共に仕込みに携わった、
天才「小玉健吉」が「秋田流生酛造り」を開発したり、
全国で初めての、“冷やして飲む生酒”「玲琅太平山」を商品化したり、
今や秋田のパン作りに必須の「白神こだま酵母」を開発したり、
東京に支店を構える程の黄金期を築き上げます。
そのサクセスストーリーの始まりは、きっとこの昭和九年の快挙です。
こうした物語も加味して頂いて、
社史を読むような、そんな気持ちで味わって頂きたいと思います。
ほんのり醤油、糖蜜、昆布出汁を思わせるような、
熟感をはらんだ落ち着いた香り立ち、
口当たりはまろやかで、
深みのある旨甘苦が口の中にふくらみます。
喉の通りはやや印象的で、
後味フェードアウトしていきます。
40%と高精米にしては味わいは深めです。
冷だと味が大分閉じ、
燗で旨味がブワッと開ますが、
玉が利くほど濃醇でもありません。